ベトナムのキャッシュレス決済がもたらす合理的な社会

ベトナムキャッシュレス

現在、ベトナムで使われている様々な決済方法で1,000兆ドン(5兆円)以上のお金が動いており、9,400万人の人口を考えると、老若男女問わず、一人ひとりが1,000万ドン(5万円)所持していることになる。

こうした中、国営機関から民間企業にいたるまで、現金で払うことで多くの時間と労力を消耗していると、ここ数年に渡り指摘されている。

■現金支払のみ、すでに時代遅れ

4月初旬、Le Thi ThanhさんはHa Dong区でバイクの登記手続き、ナンバープレート登録及び発行にかかる費用を支払った。現金以外の支払い方法に慣れてしまっている彼女は、カードか銀行振込での支払いを申し出たが、税務支局に受け付けてもらえなかった。

「1時間以上かかる手続きが終わり、そこでやっとHa Dong支局は支払いに関する情報を提示してきました。手続き費は税務支局から2kmも離れたVietin Bankの支店の窓口で支払うよう求められたのです。一国の首都にある税務支局ですが、なぜこうした費用の振込やカード払いができないのでしょうか」と彼女は首を傾げる。

ホーチミン市のMinh Thuさんによると、彼女やその家族もカードやeウォレットなど、いくつかの支払いツールを有しているが、市場やガソリンスタンド、子どもの学費など、こうした場所は銀行振込を受け付けていないことから、相変わらず現金で支払わなければならないという。

「これは私の意見ですが、同期的な解決策が必要なのではと思います。便利な支払いを求めてはいても、やはり現金を完全に断つということは考えられません。外出時、現金を持っていないと不安になることがあります」と話す。

VietcombankのDao Minh Tuan副社長は「政府の指導によると、これから2020年までに、全ての行政手続きの改善を進めていき、全ての行政サービスの支払いに現金を使わなくても良くなる予定です。しかし、実際は、政策では具体的な指導がされていないため、多くの官公庁は何も進めていません」と述べた。

交通分野では、高速道路などにあるそれぞれの料金所が異なるアプリケーションや基準を用いて料金を徴収している。地方の行政サービスセンターでも、それぞれが異なるアプリケーションを使用している。

こうした統一感の欠如は、社会的ムダを引き起こすだけでなく、最終的に決済を行う銀行にとっても大きな問題になっている。

国家銀行精算部Pham Tien Dung部長は、現在、全ての決済方法の中で、現金支払いが占める割合は全体の11.5 %だと述べた。

しかし、専門家のNguyen Tri Hieu氏によると、この数字を見ると現金支払いが非常に少ないように見えるが、実際の経済において現金は非常に大きな役割を果たしていると分析している。

■多くのメリット

VietcombankのTuan副社長は、もし政策が企業や個人に対してキャッシュレスの精算を奨励すれば、税金の徴収などの取りこぼしが激減すると分析している。同時に、多くの専門家が現金決済を減らすことは経済に非常に多くのメリットをもたらすと分析している。

その中には、決済にかかる時間が短縮されること、安全性・利便性が高く、様々な費用の削減、透明性の向上などが図れることなどが挙げられる。

また、キャッシュレス決済は資本の回転を早め、経済への資本動員にもなるだけでなく、管理、監査、印刷にかかる費用を削減し、違法な取引の発見の一助にもなる。

ハノイのある銀行の頭取は「キャッシュレス精算は、国民、企業、銀行にとって大きなメリットがあります。これは銀行のこれまでの結果を見れば明らかです。当行では、毎月600万件の取引があります。今年4か月の収益は190兆ドン(9,500億円)に上りました。もしこの取引にかかった5%の手数料を節約できたとしたら、銀行はテクノロジーなどへの投資ができるほどの資本を得ることができます」と述べた。

専門家によると、利用者が銀行に手数料を支払う場合にもメリットがあり、時間と小さくない手数料を節約することができるという。また、現在の現金精算にかかる各種費用は小さくない。

国家銀行が今年初めに公開した資料には、ここ5年間、500~5,000ドンの新紙幣の印刷を止めたことで、2兆5,900億ドン(129億5,000万円)の費用を節約することができたとある。紙幣発行局と国家銀行は、500ドンと1,000ドンの新規印刷にかかる費用は同紙幣の価値より何倍も高い費用がかかると認めている。

現在、各銀行では現金を取り扱うサービスのために非常に大きな費用を費やしている。ホーチミン市の大手銀行ATMサービス室の室長は、多くの労働者の給料は銀行口座に振り込まれるが、ほとんどの利用者がそのお金を引き出して消費しているため、ATM設置のための土地利用料、通信網の設置、メンテナンス、交通費、人件費、取引明細印刷用の紙やATM内の冷房などATMサービスを維持するために少なくない費用を投じていると述べた。

■6月16日はキャッシュレスデー

キャッシュレス社会の実現と決済に占める現金の割合を早急に減らすため、国家銀行の指導を受けて、Tuoi Tre紙は電子商取引協会とベトナム国家精算株式会社と協力し、また各金融、貿易、小売企業の賛同を得て、今年の6月16日にキャッシュレスデーを開催することになった。

これは、キャッシュレスの効果を直に感じてもらうために開催するプロジェクトである。この日に合わせて各関係企業が展開する大きなプロモーションなどで、消費者はスーパーから家電量販店など、様々なところでキャッシュレス決済の恩恵を受けることができる。

また、国内外の専門家が世界の決済テクノロジーの傾向とキャッシュレス社会構築に関して協議し、その経験を共有し、キャッシュレス決済発展プロジェクトの結果や効果を振り返る場として、キャッシュレスフォーラムが開催される。

(Tuoi Tre 5月7日,P.2)