ベトナムではeウォレットに関する規定が厳格化

ベトナムの電子マネー

eウォレット開設のための書類に関する規定、取引限度額の設定、普通預金口座との紐付けなどはリスクを最小限に抑えるためのものだが、こうした規定が多くの人にeウォレットの使用を躊躇させるかもしれない。

ベトナム国家銀行は中間決済サービスに関する通達第39/2014/TT-NHNN号の改正草案に、新規開設や利用限度額に関する新しい規定を追加した。

■利用者の必要情報を追加

具体的には、eウォレットを開設する個人は、身分証明書、人民証、有効期限のあるパスポート、出生証明書(利用者が14歳以下の場合)、入国ビザまたはビザ免除を証明する書類(外国人の場合)、氏名、生年月日など、様々な情報が必要になるという。

また、eウォレット各社は、設立申請書、企業登録証明書、投資登録証明書をはじめ、法律で規定されている各種書類を準備しなければならない。

eウォレットを提供する各社(MoMo、ZaloPay、AirPay、Moca、Payooなど)は利用希望者が提出した書類が規定に沿ったもので、違反や不備がないかを精査しなければならない。それと同時に、eウォレット開設には利用者の電話番号が必要で、この電話番号を用いて個人の特定をすることになる。

また、同通達改正草案が施行される前にeウォレットを開設した利用者に対して、各社は、施行から半年以内に、同草案で追加された情報を各利用者から集めなければならないとしている。

財政専門家のBui Quang Tin氏は、eウォレットは現金を用いない現代的な決済サービスであり、今回の改正草案で盛り込まれたeウォレット利用者が各種個人情報を提出することは、理にかなっていると評価する。

こうして、個人の具体的な情報を提供することで、利用者が複数のeウォレットアカウントを開設し本来の目的以外に使用することを防ぐことができる。

また、管理機関は同サービスが悪用されないように管理をしていかなければならない。同サービスを提供する企業は、利用者の利便性を考慮しながら、様々な方法で今回追加された規定に基づいた新しい情報や書類の収集を進めていかなければならない。

「個人情報を開示しなければならないことから、eウォレットの利用を控える人もいるかもしれません。しかし、同サービスがさらに早く、便利に、現金を使わずに支払いができれば、多くの顧客を呼び込むことができるでしょう」と同氏は述べた。

通達改正草案は、eウォレットの利用者は、口座名義が本人のベトナムの銀行口座かATMカードをeウォレットに登録しなければならないと規定している。eウォレットへの入金は、利用者名義の銀行口座かATMカードを通さなければならず、eウォレット間の送金については、同種のeウォレット同士で行うことができる。

注意すべき点は、通達改正草案がeウォレットを利用する個人、組織の取引限度額を具体的に定めているところである。

この規定によると、個人利用者の取引限度額は1日2,000万ドン(10万円)、1か月1億ドン(50万円)までとなっている。一方、組織の利用限度額は1日1億ドン(50万円)、1か月5億ドン(250万円)までとなっている。

さらに、同改正草案は、eウォレットサービスを展開する企業に対してAクレジットサービスや残高に対して利子をつけることなど、利用者の電子マネーを増加させる行為を禁止している。

また、マネーロンダリング、違法行為のための資金調達、詐欺を目的としたeウォレットの利用は当然禁止されており、eウォレットやその情報の売買、レンタル、譲渡も禁止されている。

■利用者の取引方法の変更を懸念

今回の改正案で追加された規定を見てみると、eウォレットアカウントの開設や利用が非常に難しくなったと感じる。

現行の規定では、多くのeウォレットサービスで、利用者はアプリをダウンロードし、電話番号を登録すれば、入金、送金、その他の取引ができるようになっている。

国家銀行の資料によると、現在、全国には、MoMo、AirPay、ZaloPay、VTCPay、SenPay、Vi TrueMoney、Mocaなど26のeウォレットサービスがあり、eウォレットで取引可能な組織(店舗やサービスなど)は1万を超える。

2018年末までで、全国の銀行に登録されたeウォレットは420万に上った。中には、利用者数百万人を抱えるeウォレットもあるという。

eウォレットサービスは徐々に普及してきており、都市部では電気、水道、インターネットの支払いをはじめ、買い物、サービス、電話料金のチャージ、保険などの購入にも利用されている。路上の飲食店でもeウォレットで支払いが可能なところも増えている。

ホーチミン市3区で仕事をしているHoai Lamさんのスマートフォンには、MoMo、Vi Viet、Viettel Pay、ZaloPay、Sacombank Payなど、様々なeウォレットアプリがダウンロードされている。

彼女は「アプリをダウンロードして、電話番号を登録するだけなので簡単ですし、何より便利です。一度にたくさんのeウォレットサービスに登録したのは、各社が展開しているプロモーションを受けることができ、必要なときにそれらを利用するためです。今後、人民証の登録などが義務付けられれば、登録するeウォレットを減らすことも考えますし、日常的に使える最も便利なものだけを使うことになると思います」と話す。

eウォレットの中間決済サービスを提供する企業の代表者は、今回の規定の厳格化でeウォレットサービスの利用を控える人も出てくるかもしれないと心配する一方で、現金を使わない支払い部門の強化は国家が推し進めている政策の一つでもあると述べた。

同氏は、個人のeウォレット利用限度額が1日2,000万ドン(10万円)というのは、非常に低く、合理的ではないという。現在、パソコンやスマートフォン、バイクなど多くの商品が2,000万ドン(10万円)を超えており、eウォレットでの支払いを希望する人にとって大きな問題になる。

同氏は「現在は、非常に多くの商品やサービスがそれ以上の金額であり、eウォレットでの支払いが可能です。しかし、同改正草案が施行されれば、1日2,000万ドン(10万円)という壁が利用者に不便さを感じさせ、他の決済方法を選択させてしまうことになるでしょう」と懸念している。

そうした中、ある銀行の副頭取は、今回の改正案が定める利用限度額について概ね賛同している。

現在、各取引銀行は、認証方法やセキュリティーのレベルに応じて限度額を定めている。現行のeウォレットはOTPコードとパスワード認証で、取引銀行の最低限度額と同等の取引ができるようになっている。例えば、OTPコードによる認証の手順を省くということは、それによって引き起こされるリスクを容認するのと同義である。

この副頭取は、「今回の改正草案は、厳格化されただけでなく、はっきりとしたガイドラインを定めているところが評価できます」と述べた。

■非合法な取引を防止

国家銀行の同通達改正委員会によると、eウォレットサービスの利用限度額の設定は、マネーロンダリング、非合法活動など、eウォレットを利用した違法行為を最小限に抑えることを目的としており、日常的な支払いの利便性を向上させるというeウォレットの役割には合致しているという。

また、eウォレットサービスを提供する企業は、一人の利用者に複数のeウォレットアカウントを提供することはできない。こうした取り決めによって、マネーロンダリングや違法行為のために複数のeウォレットアカウントを開設することを防ぐことができる。

(Nguoi Lao Dong 4月22日,P.10)